Copilotによる業務効率化の進め方|部分的な検証を会社の判断へつなげる

Copilotによる業務効率化の進め方を表すイメージ

Copilotによる業務効率化には、業務整理、試作、現場へのヒアリングなど、さまざまな始め方があります。

どこから始める場合でも大切なのは、検証で得た結果を、業務上の効果と会社の判断へつなげることです。一つの部署で効果が出ても、その結果をそのまま全社へ当てはめることはできません。

この記事では、小さな検証で効果が出る条件を確認し、適用範囲や費用、運用体制を含めて、会社の次の判断へつなげる方法を考えます。

本記事では「Copilotによる業務効率化」と表現しますが、考え方はMicrosoft 365 Copilotだけに限りません。Copilot Studioで作成したAIエージェントや、Copilot Coworkを使った業務支援にも共通します。

目次

Copilotによる業務効率化では、業務上の変化を確認する

Copilotによる業務効率化で業務上の変化を確認するイメージ

Copilot Studioでエージェントが回答できた、OCRで帳票を読み取れたといった結果は、技術的に実現できたことを示します。しかし、それだけで業務が改善されたとはいえません。

業務効率化として見るには、誰の、どの業務が、どのように変わったかを確認します。例えば、社内問い合わせに回答するエージェントであれば、次のような変化を見ます。

  • 利用者が自分で必要な情報を得られたか
  • 回答を待つ時間が短くなったか
  • 担当者の問い合わせ対応が減ったか
  • 人による確認や修正が増えていないか
  • 解決できない質問を担当者へ引き継げたか

一つの作業が短くなっても、別の担当者や後工程の負担が増えていれば、業務全体では効率化できていない可能性があります。検証前の作業時間、件数、手戻りなど、確認できるものは記録しておきます。

Microsoft Learnの「AIエージェントの投資収益率(ROI)とビジネス価値を測定する」でも、利用状況だけでなく、エージェントが適切に機能しているか、適用範囲を広げられる価値を生んでいるかを確認する考え方が紹介されています。

AI活用の投資対効果を、AI投資収益率(ROAI)と表現することもあります。利用回数や削減時間だけでなく、業務に起きた変化を、継続・改善・展開の判断につなげることが重要です。

小さな範囲で、効果が出る条件を確かめる

小さな範囲で業務効率化の効果を検証するイメージ

CopilotやAIエージェントを使った業務改善では、特定の業務や部署、利用者に範囲を絞って試すことがあります。ただし、小さく始めること自体が目的ではありません。どのような条件で効果が出るのかを確認することが目的です。

社内問い合わせに回答するエージェントであれば、必要な規程や手順書がそろっているか、内容が最新か、AIで回答する範囲と人へ引き継ぐ範囲を分けられるかを確認します。

検証では、AIの機能だけでなく、次の条件も見ます。

  • 対象とする業務と利用者
  • 利用するデータ
  • 人に残す確認や判断
  • 対象外とする例外
  • 公開後の更新や運用

「作業時間を短縮できた」「問い合わせに回答できた」といった結果だけでなく、その効果が得られた条件も記録します。条件が分かれば、同じ方法を別の業務や部署へ適用できるか考えやすくなります。

小さな検証の価値は、小さな成功事例を作ることだけではありません。効果が出る条件と、うまくいかない条件を明らかにし、次の判断に必要な根拠を得ることにあります。

部分的な結果から、全体への適用可能性を考える

部分的な検証結果から全体への適用可能性を考えるイメージ

小さな範囲で効果が出ても、その結果をそのまま全社へ当てはめることはできません。ある部署で作業時間を短縮できても、部署ごとに業務手順や利用するデータ、例外対応が異なる場合があるためです。

検証結果を他の業務や部署へ広げるときは、次を確認します。

  • 対象業務と利用者:同じ業務を行う部署や担当者がいるか
  • データと業務手順:利用する情報や承認方法に違いがないか
  • 人の判断:人へ引き継ぐ範囲や判断基準が異ならないか
  • 運用:情報更新や問い合わせ対応を続けられるか

また、一部の作業が短くなっても、別の担当者や後工程の負担が増えていれば、業務全体では十分な効果を得られていない可能性があります。

小さな検証で確認した内容は、次の3つに分けて整理します。

  • そのまま適用できること
  • 条件を整えれば適用できること
  • 業務や部署ごとに個別検討が必要なこと

部分的な成果を単純に拡大するのではなく、効果が生まれた条件を他の業務や部署へ照らし合わせることが、適用範囲を判断する根拠になります。

適用範囲を広げるための費用・体制・運用を整理する

業務効率化を広げるための費用・体制・運用を整理するイメージ

CopilotやAIエージェントの小さな検証で効果が確認できても、対象範囲を広げるには別の準備が必要です。検証中は作成者がデータを整え、問題にもすぐ対応できますが、利用者や対象業務が増えると同じ方法では運用しきれません。

適用範囲を広げる場合は、次を整理します。

  • 利用範囲:対象となる部署、業務、利用者
  • 費用:ライセンス、構築、データ整備、教育、保守
  • 人の関与:確認、承認、例外対応、問い合わせ対応
  • 運用体制:情報更新、不具合対応、改善を担う担当者
  • セキュリティ:利用する情報、アクセス権限、記録
  • 展開方法:一括で広げるか、段階的に広げるか

すべての部署へ、同じ仕組みを展開する必要はありません。共通する部分だけを仕組み化し、部署固有の判断は人に残す方法もあります。利用頻度の高い業務や、必要なデータが整っている部署から広げる方法もあります。

大切なのは、展開範囲の広さを成功としないことです。効果を再現できる範囲と、それを継続して支えられる費用・体制・運用を整理し、次の展開を判断します。

確認できた事実を、会社の次の判断につなげる

業務効率化の検証結果を会社の判断につなげるイメージ

小さな検証で分かるのは、特定の業務、利用者、データ、運用条件のもとで得られた結果です。会社の次の判断につなげるには、確認できた事実と、今後の展開を考えるための仮説を分けて整理することが重要です。

例えば、「1件あたりの作業時間を短縮できた」は確認できた事実です。一方、「他部署でも同じ効果を得られる」は、まだ仮説です。

社内で判断を求めるときは、次を整理します。

  • 確認できたこと:業務上の変化、効果が出た条件
  • 残っている課題:精度、例外、データ、運用負荷
  • 適用できる範囲:そのまま広げられる範囲、追加対応が必要な範囲
  • 必要な準備:費用、体制、教育、運用
  • 求める判断:継続、改善、拡大、用途変更、停止

全社展開だけが検証の成功ではありません。対象を限定する、用途を変える、停止するといった判断につながった場合も、検証によって重要な材料を得たといえます。

確認できた事実を積み上げながら、会社として判断できる範囲を広げていくことが大切です。

Copilot・AIエージェントによる業務効率化を進めるための実務チェックリスト

Copilotによる業務効率化の実務チェックリストを表すイメージ

対象業務について、確認・整理できた項目にチェックを付けます。チェックできない項目は、取り組みを止める理由ではなく、次の調査や検証で確認する事項として扱います。

確認項目具体的に整理する内容確認
変えたい業務と対象者を特定した誰のどの作業を変えるのか。例:総務担当の問い合わせ対応、営業担当の商談記録作成□
現在の業務負担を確認した作業時間、発生頻度、処理件数、待ち時間、差し戻しなど。例:1件15分、月400件、差し戻し月30件□
小さく検証する範囲を決めた対象部署、利用者、業務、期間、件数。例:総務部5人、問い合わせ100件、4週間□
効果が出る条件を整理した必要なデータ、通常処理と例外、CopilotやAIエージェントに任せる範囲、人が確認・判断する範囲、運用上の前提□
業務上の変化を記録した処理時間、完了件数、修正件数、手戻り、人への引き継ぎ、前後工程への影響□
他の業務・部署への適用可能性を確認した業務手順、利用データ、権限、例外の違いを確認し、共通化できる部分と個別対応が必要な部分を分ける□
費用・体制・運用を整理したライセンス、構築、データ整備、教育、人による確認、保守、改善担当、問い合わせ対応□
会社に求める次の判断を明確にした限定運用の継続、改善後の再検証、対象拡大、本番化、用途変更、停止のいずれを判断してほしいか□

チェックリストの使い方

このチェックリストは、すべての項目を埋めてからCopilotやAIエージェントの活用を始めるためのものではありません。現在の状況に応じて、確認できる項目から整理します。

最終的に、次の内容を説明できる状態を目指します。

  • 何を変えたいのか
  • どの条件で試したのか
  • 実際に何が変わったのか
  • どこまで広げられそうか
  • 広げるために何が必要か
  • 会社に何を判断してほしいのか

チェックが付かない項目は「未確認事項」として残します。確認できた事実と未確認事項を分け、次に何を確かめるかを明確にするために活用してください。

シリーズで読む
Copilot・AIエージェントによる業務効率化を考えるシリーズでは、検証の進め方、業務データの確認、効果測定までを段階的に整理しています。

→ 第2弾|Copilot活用では業務データをどう見る?今ある情報から進め方を判断する

→ 第3弾|Copilot・AIエージェントの効果をどう測る?利用・品質・業務成果から判断する
日々のCopilot活用も見直す
Copilotによる業務効率化は、エージェントや仕組みを作ることだけではありません。日々の業務で、Copilotへ目的や前提をどう伝えるか、チャットをどのように整理するかも、活用効果に影響します。

→ Copilotの力を引き出すプロンプトのコツ|人への依頼と同じように考える

→ Copilotチャットの使い方|テーマ分け・並行作業・引き継ぎのコツ