AI の業務活用 ~ Power Automate AI Builder の使い方 ~

紙ベースや画像ファイルでの業務資料、請求書、伝票などは、今なお多くの企業で重要な役割を果たしています。
しかし、これらを手作業で転記・分類する作業は手間がかかり、ミスも起こりやすいのが実情です。
近年では、こうした定型業務の効率化に加え、AIを活用して文章の内容や顧客の反応を分析する「感情分析」も注目されています。
顧客対応やアンケート結果から満足度や不満の傾向を把握し、サービス改善や施策の見直しに活かすことが可能です。
本記事では、Microsoft Power Automate と AI Builder を活用し、画像やPDFからの情報抽出やテキストからの感情分析を通じて、業務をよりスマートに進める方法をご紹介します。
目次
Power Automate と AI Builder
Power Automate フロー作成
テキスト抽出
感情分析
AI活用サポートサービス紹介
Power Automate と AI Builder
Power Automate
Microsoft が提供する Power Automate は、クラウドベースの自動化プラットフォームで、日々の業務に潜む「繰り返し作業」を自動化する強力なツールです。
複数のアプリやサービスを連携させ、ワークフローを自動化することで、作業時間の短縮やヒューマンエラーの削減を実現します。
主な特徴:
①ノーコードで簡単に自動化:専門的なプログラミング知識がなくても、ドラッグ&ドロップで誰でも自動処理を構築できます。
②幅広い連携先に対応:Microsoft 365、SharePoint、Googleサービスなど、数百種類以上のアプリと連携可能です。
③豊富なテンプレートからすぐに使える:あらかじめ用意されたテンプレートを活用すれば、数分で業務自動化をスタートできます。
AI Builder
AI Builder は、Power Automate 上で AI 機能を手軽に活用できるアドオン機能です。
従来は専門スキルが必要だった AI モデルの構築や活用が、ノーコードで実現できます。
例えば、画像から情報を読み取ったり、文書から重要なキーワードを抽出したりといった処理を自動化できます。
主な特徴:
①誰でも使えるシンプル設計:AI モデルの構築や適用が、直感的な UI で簡単に行えます。
②多様なAIモデル:画像認識、物体検出、感情分析、カテゴリ分類など、業務に直結するモデルが豊富に揃っています。
③自社データでAIをチューニング可能:独自のデータを使ってモデルをトレーニングすることで、自社業務に最適化されたAI活用が可能です。
AI Builder は、業務の定型処理から高度な分析まで対応する強力なツールです。
中でも「テキスト抽出」と「感情分析」は、実用性の高い主要機能です。
テキスト抽出では、スキャンされた伝票や画像、PDF等のドキュメントの内容を自動で整理できます。
感情分析では、問い合わせやアンケートの内容から、満足・不満などの感情傾向を自動で分類・可視化できます。
このように、単なる業務自動化にとどまらず、情報の「質」と「意味」にまで踏み込んだAI活用を実現できるのが特徴です。
Power Automate フロー作成
今回作成するフローはこちらです。
フロー実行時に、ユーザが画像やPDFドキュメントをアップロードすることで
Power Automate が自動的にドキュメントのデータを認識し、テキストを作成します。
①フロー作成
Power Automate を起動し、「作成」から「インスタントクラウドフロー」を選択します。
フローのトリガーには 「フローを手動でトリガーする」を選択します。
最後に「作成」をクリックします。
②ファイルコンテンツの設定
「手動でフローをトリガーします」アクションをクリックし、「入力の追加」から「ファイルコンテンツ」を追加します。
③アクションの設定
「画像やPDFドキュメントのテキストを認識する」アクションを追加します。
「画像」には「手動でフローをトリガーします」アクションで設定した「ファイルコンテンツ」を設定します。
以上で設定は完了です。
このように、とても簡単にフローを構築することが可能です。
テキスト抽出
画像認識は、画像ファイル(JPEG、PNGなど)から特定の情報を自動で抽出する技術です。
例えば、下記のような物件の資料から情報を抽出してみましょう。
これにより、物件情報の整理が効率化され、迅速かつ正確に必要な情報を得ることができます。
実行結果
実際に Power Automate を実行し、画像から情報を抽出した結果はこちらです。
また、「GPT でプロンプトを使用してテキストを作成する」アクションを使用して、「家賃」や「問い合わせ先」などの特定の情報を抽出することもできます。
(今回は本アクションの詳細は省略します。)
いかがでしょうか。
これらの処理を Power Automate のフローに組み込むことで、画像をアップロードするだけで自動処理が完結します。
また、下記のようなPDFファイル(資格手当一覧表)を解析し、抽出されたデータをもとに、より詳細な情報を取得することも可能です。
実際に Power Automate を実行し、PDFファイルから情報を抽出した結果はこちらです。
また、「GPT でプロンプトを使用してテキストを作成する」アクションを使用して、「応用情報技術者」の資格手当を取得することもできます。
(今回は本アクションの詳細は省略します。)
感情分析
感情分析 とは、テキストデータから感情や意見、態度を自動的に識別し、分類する技術のことです。
これは自然言語処理の一分野であり、特にソーシャルメディア、レビューサイト、カスタマーサポートのチャットログなど、膨大な量のテキストデータを扱う場面で広く利用されています。
感情分析の主な目的
感情の分類: テキストがポジティブ、ネガティブ、ニュートラルのどれに該当するかを判断します。
特定の感情の識別: 喜び、怒り、悲しみ、驚きなど、特定の感情を識別します。
「テキスト内の肯定的または否定的な感情を分析する」アクションを使用して実際に Power Automate を実行した結果はこちらです。
下記結果より、テキスト「ありがとうございます。とても感謝しています。」は、内容が肯定的だということが分かります。
感情分析の活用事例
AIによる感情分析は、ユーザーの声や反応を深く理解し、マーケティングやサービス改善に役立てる強力な手段です。
実際に感情分析が活用されている具体的な事例には以下のようなものがあります。
①SNS分析によるブランド戦略
SNS上で言及された自社ブランドへのコメントを感情分析し、新商品やキャンペーンに対する反応を定量化
②ECサイトのレビュー分析による商品改善
良いレビューが多い商品の傾向を分析して、売上アップの戦略に応用
③映画配信サービスの作品評価やレコメンド最適化
どの作品が「感動」「笑い」「退屈」などと評価されているかを解析
これらの事例からも分かるように、感情分析は顧客理解を深め、より的確な意思決定やサービス向上につなげる有効な手段です。
今後ますます多くの分野で、感情データの活用が競争力の鍵となっていくでしょう。
AI 活用サポートサービスの紹介
Power Automate と AI Builder を組み合わせることで、これまで人手で行っていた「画像や書類からの情報収集・整理」といった作業を、自動化・高速化・省力化することが可能になります。
人手不足や業務効率化に直面している企業にとって、AI の導入はもはや“検討すべき選択肢”ではなく、“導入すべき戦略”になりつつあります。
弊社では、Power Automate + AI Builder の導入を支援するAI活用サポートサービスをご提供しています。
要件定義からモデル設計、実装・運用までをトータルでサポートし、貴社の業務に即した形でAIによる業務革新をお手伝いします。
AI の業務活用をより効果的に進めるために、ぜひ一度、具体的な課題やご希望をご相談ください。