Copilot Studio × MCP連携で Dataverse の名刺データを会話で活用

Copilot StudioとMCPサーバーの連携でDataverseの名刺データをチャットから活用する構成を示すアイソメトリックイラスト

「社内のデータをAIに活用させたいけれど、何から始めればいいかわからない」——そんな声をよく耳にします。この課題に対する一つの回答が、 Copilot Studio とMCPサーバーの連携です。

本記事のテーマは、Dataverse の名刺データです。AIと業務データをつなぐと何が変わるのかを整理します。技術的な実装より「結局、何ができるの?」にフォーカスしました。エンジニアでない方にも安心の内容です。

目次

業務データを Copilot で扱うと何が変わるのか

Dataverseの名刺データを活用してできること

MCPとは?

Copilot Studio で使うMCPとは?

エージェントとMCPサーバーの役割分担

DataverseをMCPで連携する構成イメージ

MCPによるDataverse連携の実践例

今回の検証内容とデモのポイント

今後の展開:データ活用はどこまで広がるか

まとめ

業務データを Copilot で扱うと何が変わるのか

AIチャット画面から業務データにアクセスし検索やカレンダーなどの情報が自動的に集まる様子を描いたアイソメトリックイラスト

Microsoft Copilotは、WordやExcel、Teamsの中で使えるAIアシスタントです。自然な言葉で指示を出せるため、すでに多くの企業が導入を始めています。

ただし、標準のCopilotが参照できる範囲には限りがあります。基本的には、Microsoft 365上の自分がアクセスできるファイルやメールが対象です。

ここで「自社の業務データにもAIがアクセスできたら?」と考えてみてください。具体的には、次のようなことが実現します。

  • チャットで聞くだけで、顧客情報を引き出せる  「〇〇株式会社の担当者は誰だっけ?」と聞くと、名刺管理データベースから該当情報を返してくれます。
  • 調べる→開く→検索する、の手間がなくなる  わざわざアプリを開いてフィルタをかける作業が不要になります。会話するだけで必要な情報にたどり着けます。
  • 定型的な確認作業をAIに任せられる  「先月登録された名刺の件数は?」など、ちょっとした集計をその場で依頼できます。

つまり、業務データをAIに接続するとは、「検索」や「確認」の手間を会話に置き換えることです。この変化が、日々の業務スピードを地味に、しかし確実に改善していきます。

Dataverse の名刺データを活用してできること

本記事では、Dataverse に格納された「名刺管理データベース」を例に話を進めます。

Dataverseは、 Microsoft Power Platform の中核にあるクラウドデータベースです。Power AppsやPower Automateのデータソースとして幅広く使われています。

Power Apps の基本機能や導入メリットは「Microsoft Power Apps とは?|できること・活用事例をわかりやすく解説」で紹介しています。

この名刺データをAIと連携させると、たとえば以下のようなやり取りが可能になります。

ユーザーの質問AIの応答イメージ
「〇〇商事の名刺データを見せて」会社名で検索し、登録されている担当者一覧を返す
「最近登録した名刺は?」登録日の新しい順にレコードを取得して表示する
「△△さんの連絡先を教えて」氏名で検索し、メールアドレスや電話番号を返す

これまでは、Power Apps を開いて検索する必要がありました。SharePointリストを使うケースもあったでしょう。しかし、AIと連携すればチャットで問いかけるだけで済みます。これがデータベース連携の最大のメリットです。

自社の業務データをAIで活用する方法について、まずは気軽にご相談ください。

※ご相談・お見積りは無料です

では、この「AIと業務データベースをつなぐ」仕組みとは何でしょうか。次にご紹介する MCP(Model Context Protocol)がその鍵を握ります。

Power Apps での名刺管理については「Power Apps で名刺管理をするという選択肢」で紹介しています。本記事のMCP連携は、その仕組みをAIで拡張するアプローチです。

MCPとは?

MCPの仕組みを表すアイソメトリックイラスト。中央のUSB-C型ハブを通じてAIアイコンとデータベースが接続されている

MCP(Model Context Protocol)は、AIと外部のデータやツールをつなぐ共通ルールです。2024年11月にAnthropic社がオープンソースとして公開しました。Anthropic社は、AIアシスタント「Claude」の開発元として知られています。

わかりやすいたとえとして、「AIのUSB-C」という表現がよく使われます。

スマートフォンの充電器を思い出してください。かつてはメーカーごとにケーブルの形が違いました。しかし、USB-Cの普及により、どのメーカーのスマホでも同じケーブルで充電できるようになりました。

MCPが目指しているのも同じ考え方です。

  • MCP登場前: AIとデータベースをつなぐには、接続先ごとに個別開発が必要だった
  • MCP登場後: 共通ルールに対応するだけで、さまざまなAIから同じデータにアクセスできるようになった

このように、MCPは「AIと外部データの接続方法を標準化する」ための仕組みです。特定の企業やAIモデルに依存しないオープンな規格であり、Microsoft・OpenAI・Googleなど業界全体で採用が進んでいます。

MCPの仕組みをもう少し具体的に

MCPの構成要素は、大きく分けて3つあります。

  • ホスト: AIアシスタント側のアプリケーションです。Copilot Studioのエージェントがこれに該当します
  • クライアント: ホストの中でMCPサーバーとの通信を担う部分です。ユーザーが意識する必要はありません
  • サーバー: 外部のデータやツールを提供する側です。今回の構成では、Dataverseに接続するNode.jsアプリがこれにあたります

データは「ホスト → クライアント → サーバー」の順に流れます。ユーザーから見ると、チャットで質問するだけです。裏側でこの3つが連携し、回答を組み立てています。

Copilot Studio で使うMCPとは?

Copilot Studio は、Power Platform上でAIエージェントを作れるサービスです。コードはほとんど不要です。プログラミングの知識がなくてもチャットボットを作成できます。使い方の詳細は「Copilot Studio とは?|使い方・活用事例をわかりやすく解説」をご覧ください。

この Copilot Studio が、2025年5月のMicrosoft Build 2025でMCPへの正式対応(GA)を発表しました。

では、具体的に何が変わったのでしょうか。

ポイントは、エージェントに「ツール」としてMCPサーバーを追加できるようになったことです。

従来もコネクタで外部連携は可能でした。ただし「どの情報を」「どの順番で」取得するか、フローで細かく設計する必要がありました。

MCPサーバーを使えば、この負荷が大きく減ります。サーバーを追加するだけで済みます。エージェントが「どのツールを使うか」を自分で判断してくれるからです。

たとえば「〇〇さんのメールアドレスを教えて」と聞かれたとします。エージェントは「名刺検索ツール」を自動で選びます。そして必要な情報を取得し、回答を返します。開発者が個別に設計する必要はありません。

エージェントとMCPサーバーの役割分担

両者の関係は「指示する側」と「作業する側」の分担です。

役割担当やること
ユーザーとの対話Copilot Studio(エージェント)質問を受け取り、自然な言葉で回答を返す
判断・指示Copilot Studio(AIモデル)どのツールを使うべきか判断し、MCPサーバーに指示を出す
データの取得・操作MCPサーバー指示に基づいてデータベースにアクセスし、結果を返す

Copilot Studio は「窓口」と「司令塔」の役割です。一方、MCPサーバーは「実行部隊」としてデータアクセスを担います。

この分業には大きなメリットがあります。MCPサーバー側でツールを追加するだけで、エージェントの「できること」が自動的に広がるのです。そのため、Copilot Studio 側でフローを組み直す必要はありません。サーバーにツールを追加してデプロイし直すだけで、エージェントが新しい機能を使い始めてくれます。

DataverseをMCPで連携する構成イメージ

ここからは、実際にDataverseの名刺データをMCPで連携する場合の全体像を見てみましょう。技術的な詳細は省略し、「誰が何をしているか」の流れに絞って整理します。

ユーザー(Teams等)
    │
    │ 「〇〇商事の担当者は?」
    ▼
Copilot Studio エージェント
    │
    │ 質問内容を解析 → 名刺検索ツールを使うべきと判断
    ▼
MCPサーバー(Node.js / Azure等でホスト)
    │
    │ Dataverse Web API を呼び出し
    ▼
Dataverse(名刺管理テーブル)
    │
    │ 検索結果を返す
    ▼
MCPサーバー → Copilot Studio → ユーザーに回答

構成のポイントは以下のとおりです。

  • MCPサーバーはクラウド上(Azure App Serviceなど)にホストし、Copilot Studio からアクセスできる状態にしておく必要があります
  • MCPサーバーの中に、やりたいことに応じたツールを複数定義しておきます
  • Copilot Studio 側では、MCPサーバーのURLを登録するだけで、その中のツールをすべてエージェントが認識します
  • ツールを増やしても Copilot Studio 側の設定変更は不要——サーバーにツールを足すだけで対応完了です

なお、DataverseにはMCPサーバーとして直接機能する仕組みも用意されています。これは「Dataverse MCP」と呼ばれるものです。レコードの作成・読み取り・更新・削除といった操作が、標準ツールとして利用できます。 用途や要件に応じて、自前のMCPサーバーを構築するか、Dataverse標準のMCP機能を活用するかを選択できます。

Power PlatformとAzureの使い分けについては「Power Platform と Azure はどう使い分ける?」で整理しています。

📎 MCPサーバーの作成方法についての公式ドキュメントは、Microsoft Learn|新しいMCPサーバーを作成するをご参照ください。

MCPによるDataverse連携の実践例

実際に、 Copilot Studio のエージェントにMCPサーバーを追加して名刺データと連携した場合、どのようなやり取りが可能になるのでしょうか。ここでは具体例をご紹介します。

例1:会社名で名刺を検索する

ユーザー:「ABC株式会社の名刺データを教えて」 エージェント: ABC株式会社の登録名刺は3件あります。 ① 山田太郎 様(営業部 部長)mail: yamada@abc.co.jp ② 佐藤花子 様(企画部 課長)mail: sato@abc.co.jp ③ 鈴木一郎 様(総務部)mail: suzuki@abc.co.jp

この例では、エージェントがMCPサーバーの「名刺検索ツール」を自動的に呼び出しています。Dataverse Web API経由で会社名フィルタをかけ、該当する検索結果を取得しました。

Copilot Studioのテスト画面でABC株式会社の名刺を検索し会社名や連絡先が表示されたデモ画面

例2:自然な質問から意図を汲み取る

ユーザー:「先週名刺交換した人、誰かいたっけ?」 エージェント: 先週(5/19~5/25)に登録された名刺は2件です。 ① 田中次郎 様(DEF株式会社)登録日: 5/21 ② 高橋美咲 様(GHI株式会社)登録日: 5/23

注目すべきは、「先週」という曖昧な表現への対応です。AIが日付範囲に変換し、MCPサーバーに問い合わせてくれます。

従来のコネクタ連携では、こうした柔軟な解釈は困難でした。あらかじめ日付入力フォームを用意する必要があったからです。しかし、MCPの仕組みでは、AIが不足情報を補いながらツールを呼び出します。そのため、ユーザーは自然な言葉で質問するだけで済みます。

Copilot Studioのテスト画面で最近登録した名刺を教えてと質問し直近1週間の名刺一覧が表示されたデモ画面

このようなAIエージェントの構築や、自社データとの連携にご興味がある方はお気軽にどうぞ。

※ご相談・お見積りは無料です

今回の検証内容とデモのポイント

今回、私たちが実際に検証したのは、以下の構成です。

項目内容
AIエージェントCopilot Studioで構築
MCPサーバーNode.js(Express)で自作し、ローカル/クラウドにホスト
データソースDataverse上の名刺管理テーブル
接続方式MCPサーバー → Dataverse Web API(OAuth認証)
ツール数4つ(会社名検索・氏名検索・登録者検索・登録日検索)

デモで確認できたポイント

✅ ポイント①:チャットベースで名刺データの検索が動作すること

Copilot Studioのテスト画面から自然言語で質問したところ、MCPサーバー経由でDataverseのレコードが正しく返ってきました。ユーザーはアプリを開いてフィルタを設定する必要がありません。会話の延長で業務データを扱える状態を実現できています。

✅ ポイント②:ツールを追加するだけで、エージェントの「できること」が広がること

最初は「会社名検索」のみの構成でスタートしました。その後、「氏名検索」「登録者検索」「登録日検索」の3つのツールを追加しています。

ここで重要なのは、Copilot Studio側の設定を一切変更していない点です。やったことは、MCPサーバーにツールを追加して再デプロイしただけです。それだけで、エージェントが新しいツールを認識しました。その結果、自動的に新しいツールを使い始めています。

従来のコネクタ連携やフロー設計では、機能追加のたびにCopilot Studio側の再設計が必要でした。一方、MCPではサーバー側の変更だけで完結します。

この違いにより、運用・拡張のハードルが大きく下がります。

✅ ポイント③:AIがツールを自動で使い分けること

4つのツールを用意した結果、ユーザーの質問に応じてAIが適切なツールを自動選択する動作を確認できました。

たとえば、「ABC商事の担当者は?」と聞けば会社名検索ツールが動きます。「田中さんの連絡先は?」と聞けば氏名検索ツールに切り替わります。ユーザーが「会社名で探して」と明示する必要はありません。質問文の意図から、AIが自動で判断してくれます。

従来のアプリでは「どの検索条件を使うか」をユーザー自身がUIで選ぶ必要がありました。しかし、Copilot StudioとMCPサーバーの連携では、その選択自体をAIが代行します。

✅ ポイント④:認証・セキュリティの設定が必要であること

Dataverse Web APIへのアクセスには、Entra ID(旧Azure AD)でのアプリ登録が必要です。認証方式はOAuthを使用します。加えて、MCPサーバー自体のセキュリティも設定が必要です。APIキーまたはOAuthを、Copilot Studio側で設定します。業務データを扱う以上、認証まわりの設計は不可欠なステップです。

今後の展開:データ活用はどこまで広がるか

MCP連携の拡張イメージを示すアイソメトリックイラスト。中央のハブから複数のAIエージェントやデータベースやクラウドが放射状に広がっている

今回は名刺データを例にMCPの仕組みをご紹介しました。しかし、MCPで連携できるデータソースは名刺だけではありません。Dataverse上のあらゆるテーブルが、同じ仕組みでAIとつながる可能性を持っています。

たとえば、案件管理、顧客対応履歴、在庫データ、社内申請など、さまざまな業務データが対象になります。

加えて、MCPの世界は急速に広がっています。

  • マルチエージェント連携: Copilot Studio上で複数のエージェントを連携させる構成が可能です。「名刺検索エージェント」「規定確認エージェント」「申請処理エージェント」が協力して、一つのタスクを完遂するイメージです
  • Agent-to-Agent(A2A)プロトコル: MCPが「AIとデータをつなぐ」ものだとすれば、A2Aは「AIとAIをつなぐ」プロトコルです。異なるフレームワークのエージェント同士が協調動作できる時代が見え始めています
  • 業界標準としての定着: MCPはLinux Foundation傘下の「AAIF(Agentic AI Foundation)」で管理されています。Microsoft・OpenAI・Google・Anthropicなど主要企業が参画しており、今後さらに対応サービスが増える見込みです

「AIに業務データをつなぐ」取り組みは、まだ始まったばかりです。すぐに全社導入すべき段階ではないかもしれません。それでも、自社のデータ資産をどう活かすかを考えるうえで、MCPという選択肢を知っておくことには大きな意味があります。

まずは「自社にはどんなデータがあるか」を整理してみてください。そのうえで「AIに聞けるようになったら、誰のどんな作業が楽になるか」を考えるところから始めてみてはいかがでしょうか。

Power Platform を使った業務自動化の事例は「Power Automate / Power Apps 活用事例まとめ」でもご紹介しています。

具体的にどんなシーンで使えるか

たとえば、以下のようなシーンが考えられます。

  • 営業部門: 「先月の新規取引先の名刺を一覧で出して」と聞くだけで、報告資料の元データが手に入る
  • 管理部門: 「今月の申請件数は?」「未承認の申請はある?」など、ステータス確認をチャットで完結できる
  • 経営層: 「売上データの直近3か月の推移を見せて」と聞けば、Dataverseの数値データをもとに回答が返る

いずれも、専用の画面を開いてフィルタを設定する手間が不要になります。「聞けばわかる」状態をどこまで広げられるかが、今後のデータ活用のポイントです。

AIを活用したPower Appsの具体例は「Power Apps × AI活用術|OCR と ナレッジ検索 で業務DXを加速」もあわせてご覧ください。

まとめ

本記事では、Copilot StudioとMCPサーバーの連携によって、Dataverseの名刺データを会話形式で活用する方法をご紹介しました。ポイントを振り返ります。

  • MCPは「AIと外部データをつなぐ共通ルール」 です。USB-Cのように、接続方法を標準化する仕組みとして業界全体で採用が進んでいます
  • Copilot StudioにMCPサーバーを追加するだけ で、エージェントが複数のツールを自動で使い分けてくれます
  • ツールの追加はサーバー側だけで完結 します。Copilot Studio側の再設計は不要です
  • 「先週の名刺」のような曖昧な質問にもAIが対応 してくれるため、ユーザーは自然な言葉で問いかけるだけで済みます
  • 認証・セキュリティの設計は必須 です。Entra IDでのアプリ登録やOAuth設定が前提となります

MCPの活用範囲は、名刺データにとどまりません。案件管理や顧客対応履歴など、Dataverse上のあらゆるデータが同じ仕組みでAIとつながります。まずは自社のデータ資産を整理するところから始めてみてください。

AIとデータ連携を検討する前に、業務の整理から始めたい方は「Copilot を導入する前にやるべきこと| 業務棚卸 から始める DX・IT化 の進め方」もあわせてご覧ください。

※ご相談・お見積りは無料です